僕本月本日を以て目出度死去致候

ものごごろついたときから、なんとなく生き辛さのようなものを感じていたと思う。人と話が咬み合わない。自分の思うとおりに事が運ばない。自分の考えと他人の考えが一致しない。なぜ、私の言うことが理解できないのか。なぜ、私に対してこれほどまで敵意を向けるのか。

私はこれに力で対応した。言葉や暴力で。しかし、周りの大人たちは良い顔をしない。怒られる。叱られる。喧嘩を売っているのはアチラなのに。私以上の力で以って、私の非を認めさせる。理不尽極まりなかった。

次第に人と関わるのを避けるようになる。それは、上記のやりとりに疲れたからではなく、世の中が理不尽だったからでもない。失敗を認めたくなかったからだ。

私は漫画やアニメの主人公であった、そうでなければならなかった。世界は自分中心に周っているはずだった。それなのに、叱責され、嘲笑の的にされるようなことはあってはならなかった。それは決して認められない。人と関わると自己の醜さを露呈してしまう。得てして、人を避けるしかなかった。今置かれている状況、その原因を自己に求めることは、できなかった。

人を避け、社会を否定することは死を意味する。生きていくためには世界に、他者にコミットしていかなければならない。その摂理に意義を唱える余地はなかった。でもそこにヒーローたる自分の姿はない。会話ができない。コミュニケーションがとれない。物事が理解できない。足掻いても足掻いても、生きることに対する違和感は拭えない。

そんな折、アスペルガー症候群という言葉と出会う。目から鱗だった。晴天の霹靂。その障害の特徴は、まさしく私だった。27年間、常住坐臥感じていた違和感の正体がここにあった。私は障害者だった。

肩の荷が降りたように感じた。とても安堵した。今の現状は不可抗力だったのだ。私の努力が足りなかったわけではない。この現状を招いた責任を、この障害に背負わせることができた。アスペと言う言葉に出会えて、私は心の底からほっとした。

そして決心することが出来た。

私は宇宙人だった。

地球人だと今まで思っていたけれど、実は宇宙人だった。

私は故郷の星に帰ります。

彼岸のむこうへわたります。