京都へ行こう(4)

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嵐山からJRで京都駅へ。バスの時間が来るまで京都駅を散策する。駅屋上からは京都市内の街が見渡せる。すっかり暗くなった街全体に、灯る建物の明かりは綺麗だった。こういう夜景を愛する恋人と見るとまた格別なのだろう。しかし、私には一生その機会は訪れまい。歪んだ感傷に浸っていると情けなくて泣きたくなってきたのでその場を離脱する。センチメンタル過剰。

 

帰りのバスの中で、明日からまた始まる日常を考える。職場の人間には仮病で休んでいることがバレているに違いない。また呆れた顔で私の出勤を冷たく迎えてくれるだろう。現実に引き戻される。無理やり地面に足を着かされる。反比例する形で今日の出来事、京都の記憶が頭から飛んで行く。屋根まで飛んだ。こわれて消えた。本当に今日、私は京都に居たのだろうか。山椒が効いたふわふわ親子丼の味は妄想の産物だったのでは。明日への恐怖が私の頭を混乱させる。

 

目的地に近づいてきたので、バスの降車準備を始める。チケットがないことに気がつく。いくら探しても無い。そんな馬鹿な。高速バスのシステムというものは、乗車時にチケットを提示し、降車時にチケットを運転手に渡す。つまり、既にバスに乗車しているこの状態でチケットを無くすことはありえない。不可能に近い。バスという密室でものが消える。Mrマリックもびっくりの手品である。手品を披露した自分自身でさえタネがわからず驚嘆する。運転手に事情を説明すると、運転手も驚愕した。どうやらチケットが見つからない場合は乗車料金を再度支払わないとダメらしい。バスは既に目的地に到着した。少し時間をあげるからもう一度よく探してくださいと促される。しかし他にも乗客が居たので、迷惑はかけられないと思い素直に料金(3000円)を支払ってバスを降りた。

 

ゲンナリした気分で帰宅。きっと会社をサボった罰があたったのだろう。でもまあサボり賃として考えれば、安いものか。